ワット・スタット
高さ21メートルの巨大ブランコ
鳥居ではなく、巨大なブランコ
タイのバンコクにあるバムルン・ムアン通り。
この道路の両脇には仏像、仏壇、供物などの店がずらりと並ぶ仏具店専門のストリートで、その距離はなんと600m!
敬虔な仏教徒で賑わう通りを進むと、神社の鳥居が天高くそびえたっているのが見えます。
日本の神社では見たこともない程の高さには驚かされますが、それでも日本人だったら誰が見ても支柱の長い鳥居と思うでしょう。
ところがこれは鳥居ではなく、21mもある巨大なブランコなのです。
これはその昔、バラモン教の儀式に使われた祭具で、この高所からロープをたらし、つるされた小舟に乗った僧侶が、前へ後ろへと天を舞いながらその年の豊作を祈ったのです。
想像しただけでも心配になるほど危険な儀式ですが、実際に何人もの僧侶が大けがをし、中には亡くなった方もいました。
そこで1930年代にこの儀式は廃止され、ブランコは撤去、現在の鳥居のような姿だけが残っているのです。
このブランコがあるのがワット・スタットという王宮寺院です。
現在の首都バンコク朝(ラタナコーシン朝)の創始者たる、ラーマ1世の命により1807年に着工し、完成したのは27年後のラーマ3世の時代でした。
苦労を重ねて祀った大仏
礼拝堂にはタイ最大の青銅の大仏、高さ8メートルのシーサーカヤームニー仏が鎮座しています。
これはラーマ1世が遠いスコータイから船で運んだもので、その道中は王が自ら指揮を取ったというのです。
水路を越えやっとこの寺院に辿り着いたものの、大仏のあまりの大きさに、城壁を通ることができません。
そこで王は一度その城壁を壊してまで、この大仏を運び込んだのです。
苦労を重ねて祀った大仏ですが、王はこの一連の過酷な仕事で体調を崩し、仏像を無事に納めたと同時に「王としての役割を全うした」と崩御(逝去)したというのです。
まさにラーマ1世が命にがけで祀った仏像。細身の女性的なスタイル、穏やかに流れる目、タイで最も美しいと言われる姿にも納得です。
見どころ満載のお寺
礼拝堂や本堂の囲む壁、天井、柱には一面の絵画が描かれています。
そこには同じ構図は一切なしに、当時の生活や街並み、戦の様子などが細かく表現されています。
回廊には輝きを放つ仏像が並び、その数は100体以上。
中庭がとても広く、磨かれた床がお堂や石仏を美しく映しています。
本堂には等身大の僧侶の人形がずらりと正座し、高僧からのお説法を真剣に聞いているように見えました。
中道を歩む、勤勉なお坊さん
もっとお寺のことを教えてもらおうと、歩いていたお坊さんに尋ねてみました。
「私はこのお寺の僧侶ではないのです。今日は研修で来ました。このお寺ではパーリ語という“仏教聖典”を学ぶことができるのです。仏教は奥が深いですからね。ずっと勉強、たくさんの知識を身に付けたいです。」
タイのお坊さんはどんなことを大切にしていますか?
偏らないことです。厳しすぎてもダメ、緩すぎてもダメです。中道ですね。
そして、どんな時でも自分自身が何をしているのか、冷静に見ることが大切です。この目を養うには、かなりの集中力が必要なんですよ。